今月の4月30日はベトナムの南北統一記念日でした。 48年前の1975年4月30日に北ベトナム側の南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)がサイゴン(現ホーチミン市)にある南ベトナムの大統領官邸の柵を乗り越え、占領し、サイゴンを陥落*させたためにベトナム戦争が終結しました。現在、南ベトナム大統領官邸はベトナムの南北統一を象徴する建物として観光地化し、入場料を払えば誰でも入ることができます。 現在留学している場所で、48年前まで戦争をしていたと考えると、信じられないと思うと共に貴重な経験をしていると改めて感じます。現在の日本では戦争経験者は非常に少ないですがベトナムではまだまだ多くの方がいます。そのため、留学中にそれらの戦争のことについてなるべく多くの人に聞くことは僕の中で一つの目標です。 また、僕は留学前にサイゴン陥落についての文献や映像資料をみた時にいくつかの疑問が浮かび、現地で実際に「サイゴン陥落・統一記念日について」のベトナム人のリアルな意見や感想を聞きたいと考えていました。 ただ、かなりセンシティブな内容になってしまうので、これまでは聞くことができませんでした。今月は留学して3ヶ月目なので、ある程度周りの人との信頼関係が築けてきた状態、そして統一記念日があることからこの話題に触れやすいと思い、先月から統一記念日を楽しみにしていました。 「サイゴン陥落・統一記念日について」 「首都陥落」と聞いてどのようなイメージを持つでしょうか。僕は首都で激しい市街戦が行われた末に中心部を侵攻軍が占領するようなイメージを持っていました。しかし、僕が見たベトナムの戦争博物館や過去のメディアの報道映像資料でのサイゴン陥落は私が予想していたよりも、もっと冷静なサイゴンの姿がありました。 1975年4月30日、サイゴンが陥落する約1時間半前に南ベトナムは事実上の降伏声明を発表しました。その後、北ベトナム軍の車や戦車が事実上の降伏をしたばかりのサイゴンの大通りを通り、大統領官邸をあっさりと占領しました。南ベトナム軍はもう抵抗する力がないので、市街戦にならないことは理解できますが、僕が疑問に思ったのは南ベトナムの住民の人の冷静さでした。数日前、数時間前まで敵だった北ベトナム軍に対してヒーローが来たかのように手を振り、通りには住民が北ベトナム軍の旗を掲げていました。私はその時の南ベトナムの方々の心境が知りたく、実際に留学に行ったら聞いてみようと決めていました。 僕の周りのベトナム人で戦争経験者はかなり限られています。その中で最も身近な存在だったのが、アパートの大家さんです。大家さんは1975年当時20歳でした。大家さんにその当時のことを聞くと、 「当時は正直負けることはわかっていたし、もうとにかく戦争が終わって欲しかった」 「北に負けるとか南が勝つとかそんなことは国のこと、私達はもう戦争をしたくなかった」 と答えました。僕はそれを聞いて、戦争において国の問題以前に本当の被害者が、巻き込まれた市民であることを強く感じました。この話を聞く前の僕は、どうしても戦争というと国目線で物事を考えてしまいがちでした。しかし、問題に対してもっと俯瞰的に様々な目線で見る必要があると感じました。 また、統一記念日についても聞きました。僕はこれまでベトナム戦争が終わって南北が統一された日としか思っていませんでした。この質問は大家さんに限らず、大学の先生方にも聞くと、皆が 「Ngày hết chính tranh(戦争がもうこれ以上無くなった日)」 「Ngày không bao giờ gây chiến(もうこれ以上戦争を起こさない日)」 と答えました。ベトナム人にとってこの日は日本にとっての終戦の日のように忘れてはならない重要な位置付けにあるのです。 統一記念日に近づくにつれ、サイゴンの街は記念日をお祝いする看板や飾りつけ、当日の夜には花火も上がりました。まるでお祭りが開かれるかのような雰囲気のように思えました。しかし、あくまでもこの日は戦争が終わった「けじめ」の日でした。そのことを知ってから、街中の看板や飾りつけ、花火に戦争を忘れないという強い想いが見えてきて、全く違う景色のように見えました。 *陥落という言葉は主に反共産主義が首都を陥落させた時に対して使うようですが、ベトナム戦争は北ベトナム側のベトコン軍(Việt cộng=cộngは共産主義の意味)がサイゴンを侵攻しているため、使い方が不適切かもしれません。しかし、一般的にベトナム戦争が終結したこの出来事をサイゴン陥落と呼ぶことがあるので陥落という言葉を使っています。 添付した写真は、街中にある統一記念日の看板と道沿いにある社会主義を象徴する旗です
内訳 | 費用(現地通貨) | 日本円換算 |
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家賃 | 10,000,000 | 58,000円 |
水道光熱費 | 800,000 | 4,640円 |
学費・教材費 | 0 | 0円 |
交通費 | 600,000 | 3,480円 |
通信費 | 0 | 0円 |
食費・その他 | 6,000,000 | 34,800円 |
合計 | 17,400,000 | 100,920円 |