【目次】 ①渡航 ②滞在先(寮) ③大学 ④アドバイス ⑤感想 【①渡航】 3月4日の昼時過ぎに成田国際空港を出発した。機内食はなかなか美味しかった。15時間かけてスイスのチューリッヒで乗り継ぎをした。機内は想像以上に冷えるため、少し厚めの上着を持っていくと体温調整に役立つ。グアルーリョス国際空港(サンパウロ)到着後、スーツケースを受け取るとキャスターが1本根本から壊れていた。長旅の途中で壊れることを想定してあまり高くないスーツケースを買ったつもりだが、その予想は見事に的中した。しかしもう少しお高いものを買っていたら壊れずに済んだのかと思うと、本当に正しい選択だったのか疑問が残る。ブラジリア国際空港に到着後、大使館職員のご友人夫妻に車でお出迎えしていただき、寮まで送っていただいた。翌日もショッピングモールまで連れて行っていただき、SIMカードの契約を手伝ってもらった。 【②滞在先(寮)】 寮についてまず一つ意見を挙げるなら「お世辞にもキレイとは言えない」ということである。これは同じ寮に住む日本人留学生らと議論していたことだが、この寮に「日本から来る客をもてなす」という精神はあまり感じられない。まさに文化の違いを肌で感じたわけだが、このおもてなし精神の良し悪しについてここで述べるつもりはない。これに関してはただの文化の違いであり、決して寮のオーナーが私たちを嫌っているわけではないということは十分理解しているからだ。他の日本人留学生の話だが、寮に到着後、部屋に入るとクローゼットの中が埃で汚れていたり、壁に部分的にカビが生えていたり、ハエの死骸が床に寝そべっているなど、基本的な衛生状態が保たれていないことに気付いたという。彼は鼻水や目が痒くなるなどの症状に悩まされており、相当ストレスを溜めているようだったが、すでに他のアパートに引っ越すことを決めたらしい。私自身も、夜の騒音やキッチンを飛び交うハエが少しストレスであった。この留学報告書を読んでいる後輩たちにここで一つ伝えたいことは、必ずしもこの寮を選ぶ必要性はないということだ。「今まで先輩が寮で生活を送ってきたから、自分も大丈夫」という考えは少し安直である。私はここでの生活に慣れて不自由なく過ごしているが、人によっては楽しさよりもストレスを感じる人もいるだろう。寮での生活がどういうものなのか、改めて想像してみてほしい。ここまで読むと寮に住む気が失せてしまった人もいるかもしれないが、もちろんメリットもたくさん存在する。寮で生活するということは、いつでもブラジル人とポルトガル語の練習ができるということであり、友達もかなり作りやすい。寮内ではイベントが多く、焼きそばやシュラスコを作ったり、水遊びをしたり、サッカーをしたり、友人同士で仲を深める機会は十分にある。くわえて、他大学からの日本人留学生が集まるため、日本人同士で助け合える点も魅力的である。ちなみに今学期ブラジリア大学に日本から留学している人は全員この寮に住んでいる。 寮内のキッチン、シャワー、洗濯機は自由に使える。フォークとナイフ、箸、コップ、皿、フライパンなどは寮側から支給されるが、シャンプーやリンス、洗剤や柔軟剤などは自分で買い揃える必要がある。食器類はキッチンのロッカーに収納することができる。朝食にはパンと牛乳が支給され、昼食は17レアル(520円)払えば見た目は微妙だがそれなりに美味しい弁当を用意してもらえる。洗面所には個室トイレとシャワーが3台ずつあるが、便座が欠けていたり、鍵が壊れていたり、お湯が出なかったりと、設備の管理はあまり良くない。洗濯機は8時から10時、14時から16時、20時から22時の枠があり、名前を書いて予約する。また、キッチンの近くには図書室があり、住人たちはそこで課題をやったり、仕事をしたりしている。ちなみに「図書室」とはいうものの、本は部屋の隅っこの棚に積まれているだけで、ほぼ机と椅子があるだけの自習室である。寮内では2GのWiFiを無料で利用できるが、接続環境はあまり安定していない。 寮内は恋愛禁止だが、ここブラジルではルールは破られるためにあるというのが一種の常識である。友人から聞いた話だが、この寮の恋愛事情は「かなり複雑」らしい... 住人たち(ブラジル人)はゴシップや噂ばなしが大好きで、廊下で談笑している姿をよく見かける。私はあまり興味がないので特に気にしていない。 【③大学】 ブラジリア大学(ダルシー・リベイロキャンパス)は神田外語大学の約40倍の敷地面積を誇り、自然豊かで落ち着いた雰囲気の公立大学である。今学期はメキシコやコロンビアなどの南米諸国を中心に世界中から約20名ほどの留学生が集っており、私を含め5名の日本人留学生がいる。大学までは寮の表側から徒歩で30分ほどであるが、裏側から通ると10分ほど早く到着することができる。裏門を出てすぐの草むらにホームレスが住み着いており、治安はあまり良くないと感じる。 私が今学期に履修した授業は以下の4つである。①Introdução à Sociologia(社会学入門)、②Sociologia Brasileira(ブラジルの社会学)、③Cultura Brasileira(ブラジルの文化)、④Português para Estrangeiros 2(外国人のためのポルトガル語2)。履修登録は国際交流課(INT:インチ)で行うことができる。手順としては、事前に大学のポータル(SIGAA)にアクセスして履修したい授業のシラバスを確認し、その授業名と授業番号をINTの職員に告げるだけである。もちろんINTの職員にどの授業あ良いか相談することもできる。 学食は7時から19時30分まで営業しており、朝食はR$2,85(約85円)、昼食と夕食はR$6,10(約183円)で食べることができる。基本的には米とフェイジョアン(豆)、レタス、肉もしくは魚、日替わりの果物ジュースの組み合わせである。 【④アドバイス】 今この留学報告書を読んでいる後輩に一つアドバイスがある。それは、日本にいるうちに留学先で学びたい分野を絞り、事前に予習しておくべきであるということだ。例えば社会学に興味があるのなら、社会学入門の本を何冊か読んでみたり、それに関連する授業を履修してみたりしてほしい。事前知識があるかないかでは授業の解像度がまるで違う。日本語で理解していない内容を外国語で理解するというのは実に骨が折れる。私のような失敗をしないためにも、皆さんにはぜひ入念に準備を進めてほしい。 【⑤感想】 ブラジルに到着してから「ブラジルは先進国ではなく、開発途上国である」という事実を再認識させられた。私の留学しているブラジリアは名前こそあまり知られていないが、一応は首都だからそれなりに整備されているだろうと想像していたのだ。しかし、いざ留学生活が始まってみると、水道水が飲めない、ホームレスや物売りが多い、夜道が暗い、道路の水捌けが悪い、公共交通機関がしっかりと整備されていない、大学のシステムが潤滑に機能していない、街中の至るところで落書きが見受けられるなど、日本との違いを挙げればきりがない。しかし、これだけ不便を感じる場所でも人々は普通に生活を送っており、私自身も特に問題なくこの環境に適応してしまった。日本人学生がただ1年間「滞在する」ことと、ブラジル人がこの国に生まれ「住む」ことを一括りにして比較することが無意味であることは理解しているが、この生活水準で大きな不満なく生活できるという事実は、私がいかに日本という恵まれた環境に生まれ、必要以上に贅沢な生活を送っていたかについて大きな気づきを与えてくれた。これから1年間何が起こるか全く予想できないが、そのすべてが未来の自分の糧になることを信じて、楽しむことを忘れずに全力で駆け抜けたい。
内訳 | 費用(現地通貨) | 日本円換算 |
---|---|---|
家賃 | 2,103 | 63,535円 |
水道光熱費 | 0 | 0円 |
学費・教材費 | 0 | 0円 |
交通費 | 95.69 | 2,891円 |
通信費 | 92.93 | 2,808円 |
食費・その他 | 4,489.45 | 135,633円 |
合計 | 6,781.07 | 204,867円 |